研究概要 |
本年度は,(1) 人間の投げ上げ動作の解析と(2) 剛性可変機構を搭載したロボットハンドの製作の2課題を行った.(1) に関しては,昨年度の実験条件をさらに一般化し,全ての指関節対象とした投げ上げ動作を計測・解析した.その結果から,各関節の役割および,その制御方法について次のような知見を得た.(1)手首,MP関節の運動は投げ上げ物体の速度上昇に大きく関わる.(2)MP関節は物体の投射方向を大まかに決定している.(3)PIP関節,DIP関節は運動中,物体との安定した接触状態を保つよう姿勢が調節されている.これは,関節の受動性を利用した特徴であることも推察された.(4)各関節の運動速度ピークは手首からDIP関節への順に到達時刻がずれており,運動連鎖の現象が確認された. 一方,(2) の関節剛性可変機構を有するロボットハンドの製作においては,4本指を有するものを製作し,その基本特性について検証を行った.この剛性可変機構は昨年度試作した方式とは異なり,新たに考案したものである.関節内部に空気圧クッションを挿入し,空気圧制御により剛性を調整するものである.基礎実験により,関節剛性は2倍程度の可変域を確保できることが確認できた.また,剛性調節に要する時間はおよそ500ms程度であった.4本指構造としたことで,人の行う姿勢はほぼ再現でき,剛性調節機能と合わせて,人と同様の器用な動作の実現が期待できる.今後は,(1)から得られる知見をもとにロボットの制御アルゴリズムを考案し,ロボットハンドを用いて,人の行う投げ上げ動作を行う予定である.
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