本年度は、まず、関節剛性を調節できる4本指ハンドの製作を行った。昨年度、製作した空気圧式剛性可変機構を搭載したロボットハンドは剛性調節に500ms程度を有するため、投げ上げ動作のような瞬間的な調整の実現が困難であることが判明した。そこで、剛性を高速に調節するメカニズムとして、モータによる拮抗筋駆動方式を新たに採用したハンドの開発を行った。製作したハンドは人と同様に1つの指に3関節を有する構造である。高速に剛性を調節するため屈筋と伸筋の2本の腱により、3関節を連動させて、駆動させる簡便な機構を採用した。性能検証を行った結果、人と同程度の関節速度を出力できることが確認され、剛性調節のスピード、調整域も投げ上げに十分な領域を確保できることが確認できた。 一方で、このハンドを用いて人の行う器用な投げ上げを実現させる制御則を構築するため、人の動作解析を昨年に引き続き行った。その中では、新たに、射出に至るまでの投射物体(球体)の手のひら上での運動を解析し、指関節の運動と球の転がり運動との関係を明らかにした。その結果、手のひら上の球の初期位置とPIP関節運動を巧みに利用することにより、物体の転がり運動を制御し、その速度を射出速度の向上に利用する人のスキルを確認した。また、射出時には、各指は伸展姿勢となり、関節の剛性上昇および、弾性力を利用した射出を行っていることも考察された。 さらに、昨年からの解析結果と合わせ、ハンド関節の制御アルゴリズムを構築し、ハンドモデルを利用したシミュレーションにより、投げ上げ方向と射出速度が調節可能であることを確認した。また、実ハンドを用いた投げ上げ実験も行い、その性能の評価を行う段階となっている。
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