研究概要 |
平成22年度は交付申請書に記載した「研究の目的」および「研究実施計画」にもとづき,遠隔操作実験システムの構築に関する以下の内容を行った. (1) これまで蓄積した実験データを再度検証・解析し,人間の遅延補償学習モデルの考察に必要なデータを整理し,人間の遅延補償に対する学習能力をPID制御パラメータの観点からモデル化できた. (2) 通信遅延を模擬する機能について,実際のコンピュータネットワークの特性を模擬できる工夫を組み込んだネットワークシミュレータ(ソフトウェア)をPCおよびマイコン上で開発した. (3) 現有の双方向遠隔操作システムの修復,特に電源部を改修し,UML2.1を用いたソフトウェア工学的手法を活用した実験環境を整備した.さらにモデリングコンテストにて成果発表し結果を得た. (4) 製作した実験環境を利用して力覚情報通信実験を行った.特に,力追従性および安定性に着目した.また,ロバスト制御理論により系の安定性が改善されることの検証ができた. (5) ビデオコミュニケーションシステムによる動画像通信の遅延特性について,計測装置,計測手法を開発しながら通信遅延の実データを収集した.特に,遅延測定手法について自作の計測装置を各種考案し,その有効性を確認しながら改良を重ねた. これらの成果により,双方向遠隔操作システムにおける人間の通信遅延適応能力の実験環境が整備できた.これは今後同様の目的を持った実験を行うにあたってプロトタイプとなるノウハウであり,同種の研究を試みる研究者にとって非常に重要であると確信する.
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