平成22年度においては,開発したゲート信号生成回路を実験装置に実装し,開発したデッドタイム補償法によりハルス幅の制限が従来の半分以下になるだけでなく,パルスが欠損する極細パルスの場合でも等価的に保証が可能であることを実験により示した。さらに,研究代表者が先に提案しているアクティブ・コモンノイズ・キャンセラ(ACC)を,今回開発する高周波スイッチング(100kHz)PWMインバータに適用するための基本設計を行ってきた。 引き続いて平成23年度においては,前年度に行った基本設計に基づき,アクティブ・コモンノイズ・キャンセラ(ACC)の制作・実装を行った。このACCは,(1)インバータのコモンモード電圧を検出するY結線のコンデンサ,(2)インピーダンス変換をおこなうプッシュプル型エミッタフォロワ回路,インバータ出力にコモンモード電圧を重畳するコモンモードトランス,(4)直流電圧中性点を作る分割コンデンサから構成されている。スイッチング周波数を従来の10kHzから100kHzに高周波化したために,(3)のコモンモードトランスに用いるフェライトコアの重量を688gから85gに軽量化できる点が大きな特長である。(4)の分割コンデンサはデッドタイム補償に用いる電圧検出回路と共用することができるため,電圧検出回路とACCの両方を搭載するプリント基板を新たに設計・制作した。この基板はインバータの放熱フィンに取り付け,ACCのエミッタフォロワ回路のトランジスタの放熱器も兼ねる構造としている。動作確認実験を行い,ノイズの主な原因であるインバータのコモンモード電圧をほぼ完全にキャンセルできることを実験により確認した。また,デッドタイム補償回路についてもさらに実験を行い,ひずみ率の低減効果を確認している。 これらの成果をまとめ,電気学会産業応用部門誌に投稿を準備している。
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