研究概要 |
非破壊でケーブル中に発生した水トリーを検出する方法として,最近特に注目されている,THz波を用いた。THz波は水による吸収が顕著なため,水トリーの内部に存在する水により透過量が減少し,この透過量の変化からケーブル内の水トリーの有無や量が非破壊で推定できると思われる。 電力ケーブルの絶縁材料であるポリエチレン中に人工的に水トリーを発生させるために,試料表面に水トリー発生の起点となる傷をつける必要があるが,この傷によりTHz波が散乱され,透過量が変化する事も予想される。そこで,表面に傷をつけたポリエチレン試料にTHz波を照射し,表面各部位におけるTHz波の透過量をはじめに調べた。次にこの試料に交流高電圧を印加し,水トリーを発生させ電圧印加前と同様にTHz波を照射することで,表面各部位におけるTHz波の透過量を求めた。これらの透過量の比を求めた結果,水トリーの発生部位ではTHz波の透過量の減少割合が大きく,水トリーの発生していない部位では透過量に変化は見られなかった。このことから,THz波の透過量の減少は水トリーの発生によりもたらされている事を確認した。また,昨年度より厚い試料を用いた場合でも水トリーの有無によりTHz波の透過量に差が見られる事を明らかにした。さらに,試料断面を顕微鏡で観察した結果,試料には水トリーが密に発生している場所と,そうでない場所が見られた。水トリー発生量とTHz波の透過量には関連があり,水トリーが密に発生している場所において,特にTHz派の減衰が顕著であった。
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