研究概要 |
現在、水トリーの劣化診断方法としては、水トリー劣化による損失電流の高調波成分を電気信号として取得するなどの方法がある。これによって水トリー劣化を検出することは可能であるが、実際の水トリーの大きさや形状、または分布などの可視情報を得ることができず、どうしても切断などを行い、絶縁体の部分をスライスして着色後、顕微鏡で観察するという方法が必要である。そこで,本研究では水による吸収が顕著であるテラヘルツ波を利用することにより、非破壊で水トリーを検出することができるか検討することを目的とした。 その結果,水トリーの有無によりテラヘルツ波の透過量に違いがみられたが,テラヘルツイメージング装置の問題点として,タンネットの出力が変動するため、透過量を直接比較することが困難であることが分かった。そこで,テラヘルツ画像において、各画素の透過量を透過量の最大値で割って、比率で評価することを考えた。これより比率が一番大きく下がる区域は水トリーが多い区域であり,比率がほとんど変わらない区域は水トリーが発生しない区域であることが分かった。したがって,透過量の比率変化によって水トリー劣化を検出できることが分かった。さらに,水トリーの発生量の異なる種々の試料において同様の実験を行い,水トリーの発生量とテラヘルツ波の透過量には相関関係があることを明らかにした。即ち,テラヘルツ波を利用することで,水トリーによる絶縁劣化の程度を非破壊的に観察できる可能性があると考えられる。
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