研究概要 |
高温超伝導体(HTS)を工学的に応用する際には,遮蔽電流密度解析が必要不可欠である.それ故,遮蔽電流密度の様々な解析法がこれまで開発されてきた.1990年代前半に開発された仮想導電率法は逐次近似法の1種であるため,J-E構成方程式が強非線形性を示すHTSの解析には適さないばかりか,その収束特性は1次収束を示す.言い換えれば,仮想導電率法は低速かつ不安定である.これに対して,著者等は直接離散化法を提案した.遮蔽電流密度方程式の初期値・境界値問題を空間に関して離散化すると,同問題は連立非線形常微分方程式(連立非線形ODE)の初期値問題に帰着する.従来の直接離散化法では,同初期値問題に陰解法を適用し,各時間ステップで連立非線形方程式を解いていた.しかしながら,この非線形方程式は線形部に密行列を含むため,その解法は極端に時間を浪費する.この意味から,連立非線形ODEは陰解法以外の方法を用いて解くべきである. 本研究の目的は,上記連立非線形ODEを解くための高速解析法をRunge-Kutta法を基にして開発することである.しかしながら,たとえステップ幅自動制御アルゴリズム(ASSC)を組み込んだとしても,連立非線形ODEは必ずしも同法で解けるわけではない.この難点を克服するため,著者等は遮蔽電流密度を解析するための以下の方法を提案した: 1)遮蔽電流密度のある上限以下でJ-E構成方程式を修正した後,ASSCを実装したRunge-Kutta法によって遮蔽電流密度方程式の初期値・境界値問題を解く. 2)数値解が上限を超えているか否かを数値的に判定する.もし数値解が不等式を満足する場合には,数値解は元のJ-E構成方程式の解として許容できることになる. 数値実験により,従来法と比べて提案法が極めて高速であることが判明した.
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