単相永久磁石モータは単相誘導モータに比較して励磁損失が小さいため、一般に高効率となる。このため、冷蔵庫等のコンプレッサーの駆動機として使用することにより、更なる省エネルギーが期待されている。さらに、自己始動形単相永久磁石モータは、インバータを必要とせず、単相電源への直接投入で始動し、同期に引き入れ、同期運転することができる。しかし、単相電源のため逆相分磁界が発生し、始動時に永久磁石によるブレーキに加えて逆相分磁界のブレーキが重畳し、始動特性の改善が重要になっている。 昨年度の研究において、高効率となる回転子形状、コンデンサ容量、脈動トルクが最小となる回転子バーのスキューピッチをシミュレーション結果から決定した。このシミュレーションで独自に開発した解析法が、自己始動形単相永久磁石モータのような複雑なモータの特性予測に大変有用であることが評価され、Springer出版のComputational Methods for the Innovative Design of Electrical Devicesの6章に、"Simple and Fast Algorithms for the Optimal Design of Complex Electrical Machinesとしい掲載された。今年度は、昨年度のシミュレーション結果に加えい、高効率を維持したまま、さらに始動能力を向上した回転子形状をシミュレーションより決定し、回転子の設計、試作を行った。試作した回転子を固定子に挿入した試験機を実験装置にセットし、予備実験を開始した。 以上のように、今年度目標にしていた高性能な自己始動形単相永久磁石モータの試作を行うことができ、来年度の最適設計技術の確立に向けて大きく前進した。
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