炭化珪素(以下SiC)を材料とした静電誘導型トランジスタ(SiC-Static Induction Transistor : SiC-SIT)において、SiC材料の高温動作における頑強性を十分発揮させるためハンダを用いず、放熱性に優れた圧接パッケージ構造を設計し、本パッケージに試作したSiC-SIT素子を実装する。これに対し各種高温信頼性試験を行い、最終的にSiパワーデバイスを100℃上回る高温動作で、Siパワーデバイスの1/10以下の超低電力損失で高信頼性を保証するパワーデバイスの実現を目指す。この目的で、本年度はまず圧接治具の設計を実施した。設計にはデバイス物理及び治具の熱伝導のシミュレーションを実施し、適切な材質及び構造寸法を決定し、治具を完成することが出来た。一方、同サンプル素子の信頼性試験を実施する為の試験装置の仕様を決定し、完成させた。更に試験用のサンプル素子の試作を実施した。以上でSiCサンプルの信頼性試験を実施する準備が整ったため、22年度より本格的にSiC素子の信頼性試験を実施し、性能評価を行う。また、圧接パッケージの優位性を示すための比較対象として、従来の樹脂パッケージ(TO220)のサンプルを用いた負荷短絡性能試験をこれと並行して実施し、そのデータを論文に投稿した(IEEE Trans.Electron Device. 2010年4月号掲載)。ここでは、Siパワーデバイスと比較してSiC-SITが3倍程度負荷短絡耐量が高いことを示し、本デバイスが本質的に信頼性が高いことを実証した。この成果は、同デバイスがSiデバイスに置き換わる次世代のパワーデバイスとして有望であることを意味する。
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