昨年度に開発した有限要素法をベースとした電動機の特性解析のための並列計算機システムにおいて、次の2つの機能拡張を実現し、電動機の特性解析における計算時間の短縮をはかり、その有用性を明らかにした。 (1) 周期境界を考慮した並列計算ができるように拡張:PC 1台で計算する従来の電動機に対する有限要素解析では、同じ電磁界分布が周期的に現れる電動機の周期性を用いて解析領域を削減して計算時間の短縮が行われている。この手法は並列計算でも有効である。しかし、これを並列計算システム上に実現するためには、通信コストを抑えた領域分割が必須となる。本研究を通して、周期境界上の未知数を同一領域に配置するような領域分割法を提案し、並列計算システムに実装し、いくつかの電動機を解析することにより、その有用性を明らかにした。例えば、埋込磁石構造電動機を解析対象とした場合、1/2モデルの計算速度は1/1モデルのおよそ1.8倍となった。 (2) A-φ法による定式化により高速化を実現:辺要素有限要素法による磁界解析では、渦電流を考慮する場合、辺のみに未知数を定義するA法に比べ、辺と節点に未知数を定義するA-φ法の方が計算時間が短くなるという性質がある。A-φ法による定式化を並列計算システム上で実現するためには、隣接辺のみでなく隣接節点間あるいは節点と辺のつながりを考慮した領域分割の必要がある。本研究を通して、辺と節点の関連を考慮した領域分割法を提案し、並列計算システムに実装することにより、計算時間の短縮に成功し、その有用性を明らかにした。例えば、電流入力解析では、並列台数を1~8台のどの台数で計算した場合でも、A-φ法はA法よりも約2.5倍以上高速に計算できた。
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