高速ビデオカメラを用いた雷道の観測を実施し,落雷の中で先行する雷撃とは異なる地点に雷撃するいわゆる多地点同時落雷について詳細に検討した。高速ビデオは1000f/sで撮影されており,光の変化で記憶装置がトリガする。トリガ前後1秒の記録が得られるため,第一雷撃で記録装置がトリガされた場合には1秒間に発生する後続雷が記録される。多重雷の発生頻度は,17例中10例であり,その内6例が多地点同時落雷であった。記録された雷撃数を落雷数で割ると多重度は2.3になるが,多地点同時落雷を考慮して記録された雷撃数を観測された雷撃点数で割ると多重度は1.6になった。配電線の雷害対策を考える場合には直撃雷が主たる検討対象となるため,後者の多重度を用いる方がより正確なスパークオーバ率が評価できるものと考える。今後これらのデータの信頼性を向上させために継続的に観測を実施する予定である。 高圧配電線のスパークオーバ率には,併架されることが多い低圧配電線や通信線などのより絶縁レベルの低い電線が大きく影響を及ぼしている。これは,コンクリート柱等に直撃した雷電流の分流経路が増える事で高圧配電線のがいし間電圧が低下し,スパークオーバが抑制されるためである。低圧配電線の設置形態はさまざまであるため,長さ,条数,高さを変更して高圧配電線のスパークオーバに及ぼす影響について検討した。また,現実のスパークオーバ率との比較から,スパークオーバ率を検討する際のモデル低圧配電線を提案した。
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