産業用および民生用に広く用いられている三相誘導電動機の巻線短絡故障の検出法を確立するため、オンラインで容易に測定できる固定子巻線電流に着目して実験・検討を行った。人為的に短絡故障を再現した電動機を用いて各種短絡状態下で無負荷試験を行い、故障発生相の電流波形の解析により波形の特徴を表す量(特徴量)を抽出した。さらに、特徴量の確率分布に基づく故障診断法を提案し、その有効性の評価を実施した。主な成果を以下に示す。 1.固定子巻線に短絡故障が生じると、故障発生相の電流は正常時に比べて振幅が大きくなり位相が進むこと、短絡ターン数が多くなるとこの傾向が顕著になることを実験により明らかにした。この結果に基づき、振幅と位相を電流の特徴量とした。 2.電流の振幅と位相を軸とする2次元の図を作成することにより、同じ巻線状態のデータは所定の領域内にまとまって分布すること、故障程度(短絡ターン数)により図におけるデータの分布領域が変わることを明確にした。 3.正常時における特徴量(振幅および位相)の2次元同時確率密度関数に基づいて等確率楕円体内側の確率を導出し、その確率に基づいて巻線短絡を診断する手法を提案した。 4.短絡を再現した複数台の電動機の無負荷試験を行い、故障相電流の振幅および位相を求め3.述べた手法を適用した。確率の閾値を90%とすれば1ターン以上の巻線短絡を検出できることを示し、無負荷状態における提案手法の有効性を確認した。 5.度得られた成果は、工場における出荷試験などに適用できると考えられる。
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