産業用・民生用に広く用いられている三相誘導電動機の巻線間短絡故障を対象とし、本研究で提案している固定子巻線電流の特徴量分布に基づいた確率的診断手法の有効性の検討を行った。無負荷時における提案手法の有効性は昨年度までに確認できており、今年度は負荷接続時の有効性確認を実施した。主な成果を以下に示す。 1.負荷接続時においても無負荷時と同様に、固定子巻線電流の振幅と位相は、短絡め有無や短絡ターン数といった巻線の故障状態を反映する特徴量となることを確認した。 2.同じ巻線故障状態における特徴量(振幅、位相)は所定の領域内にまとまって分布し、巻線故障状態(短絡ターン数)により分布領域が変わること、故障相電流のみならず正常相電流においても、この傾向が認められることを明らかにした。無負荷時に比べて負荷接続時には分布領域が多少広くなるが、回転数の変動に伴うものであることを確認した。 3.故障相電流の特徴量に基づき提案手法の有効性を確認した結果、閾値を適切に設定すれば、巻線短絡故障を確率的に診断できることを示した。正常相電流の特徴量のみに基づく場合には、短絡ターン数が少ないと故障診断が難しい場合もあることがわかった。この問題を解決するため、各相電流の特徴量に基づく故障確率の積を採用し、有効性を確認した。 4.電動機の設置現場における負荷接続状態においても、提案した確率的故障診断手法は巻線故障診断に有効であることを確認した。ベアリング異常などの機械的故障に対しても提案手法は有効と考えているが、その評価は今後の課題としたい。
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