研究概要 |
本研究の目的は,圧力波検出等に基づく耐インバータサージ性能の評価技術を確立し,その有効性を明らかにすることと,この手法を用いてインバータ回路用絶縁材料の寿命推定をすることである。本申請者が排ガス処理の研究で培ってきた極性反転高電圧パルス発生技術と部分放電からの圧力波検出技術との組み合わせにより,この新手法を確立する。平成20年度に構築されたインバータサージ評価専用電源を用いて,極めて立ち上がりの早い極性反転パルス電圧を試料に印加したときの部分放電の有無を音波もしくは光で判断する手法を構築した。さらに,電圧印加,信号検出,データ保存およびデータの統計処理をコンピュータで自動的に処理するシステムを構築した。このシステムを用いて部分放電開始特性に対する,模擬サージ電圧の波形の影響について検討した。 圧力波検出システムを用いて,インバータ駆動モータ制御回路用のプリント基板における繰り返しインパルス疲労特性を調査した。金属電極とプリント基板との界面に空隙がある場合,部分放電が繰り返し引き起こされていることを圧力波測定により確認した。そのときの破壊に至るまでの遅れ時間の統計的分布から,基板は放電による劣化を経た後に破壊に至る傾向が認められた。一方,電極と基板をモールドした場合には,部分放電に起因する圧力波は検出されなかった。さらにこの時の破壊は,確率的に引き起こされる傾向が強いことを統計的に示した。 部分放電開始電圧自動計測システムを用いてエナメル線のツイストペア試料の部分放電開始特姓を調べた。多量のデータを統計処理したところ,部分放電開始電圧は,極性反転高電圧パルスの幅に依存している傾向が認められた。
|