研究概要 |
本研究の目的は,耐インバータサージ性能の評価技術を確立し,その有効性を明らかにすることと,この手法を用いてインバータ回路用絶縁材料の寿命推定をすることである。本申請者が排ガス処理の研究で培ってきた極性反転高電圧パルス発生技術と部分放電からの圧力波検出技術との組み合わせにより,この新手法を確立する。この手法を用いて,ハイブリッドカー用インバータ駆動モータの制御基板材料のインバータサージによる劣化メカニズムの解明を試みた。さらにエナメル線試料の部分放電開始電圧および消滅電圧を自動計測する評価装置を用いて,エナメル線試料の部分放電劣化現象について調べた。平成22年度に得られた結果を以下に要約する。 ・昨年度に開発された微小発光検出システムを用いた部分放電開始電圧計測技術の信頼性を高めるためにノイズ対策および安全対策を徹底し,本システムを日常的に使えるように改善した。これにより様々なエナメル線に対して部分放電特性の統計的評価を進めることができた。 ・温度上昇による熱劣化機構の可能性について調べた結果,キロヘルツオーダーでの繰り返しインパルスにより,モータ用制御基板材料が誘電損失に起因する熱による劣化の可能性は否定された。一方,一部の基板材料試料は,繰り返しインパルスによる部分放電劣化が進行し,最終的に絶縁破壊に至る傾向が統計的評価により確認された。 ・音波信号のウェーブレット解析により部分放電による音波とマックスウェルストレスによる音波の識別を試みた。両者を定量的に識別することはできなかったが,印加時間の継続と共に,,特定の周波数成分の音波が大きくなる傾向を観測した。その物理的理由については今のところ不明のままである。 ・以上の結果を,2010年7月に開催された固体誘電体の国際会議(International Conference on Solid Dielectrics)にて発表した。
|