本研究は、高温超伝導機器の実用化のために開発が行われている高温超伝導線材・導体を対象とし、それらの通電特性を定量的に測定できる新しい測定システムを開発すると共に、それらの特性を評価することを目的としたものである。本研究では、実用高温超伝導導体の電流分布特性と通電損失特性を同時に測定し、両者の関連性についても明らかにすることや、得られた結果から線材やコイルの特性劣化や異常状態の検出ならびにそれらの保護の方策を見出すことも目的としており、これら事項は高温超伝導機器を実用化する上での有用な知見となる。 平成23年度は、1kA級の高温超伝導電流トランスを活用し、大電流容量高温超伝導導体の通電特性を定量的に評価した。試料線材としてはBi-2223テープ線材を用い、これを5枚積層したものを2本作製し往復導体にして高温超伝導電流トランスと接続した。この電流トランスと往復試料導体で形成される閉回路に対し、交流通電時における試料導体の電流分布特性とインダクタンスや接続部の抵抗などの回路パラメータとの関係について詳細に調べた。電流トランスの電流比を測定した結果、通電電流の増加に伴い閉回路のインダクタンスが増加することがわかった。また、電流分布特性の測定結果より、通電電流の増加に伴い、試料導体断面内の電流分布が導体両端部から導体中央部に多く流れる領域が変化していく様子が観測できた。さらに、この通電電流の増加に伴うインダクタンスの増加は、導体断面内の電流分布特性の変化により説明できることを数値計算により示すことができた。なお、通電電流の増加に伴う接続抵抗の変化は観測されなかった。一方、ポインチングベクトル法を用いた導体の通電損失特性も首尾よく測定でき、高温超伝導導体の電流分布特性と通電損失特性を同時に測定できる測定システムを完成させることができた。
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