研究概要 |
窒素を主成分とした密閉容器中で放電を繰り返すと、絶縁破壊確率が増加する傾向が認められる。これは放電により発生した窒素活性種の蓄積が原因となり、電極等の表面で電子を発生させ、それが破壊の初期電子として振る舞うことによるものと考えられた。そこで、窒素を主成分としNO,O_2,SF_6あるいはCF_3Iをわずかに混合したガス中で放電を繰り返した場合の放電遅れ時間を測定し、電子付着の効果の有効性を確かめた。その結果、電子付着係数の大きなガスを混合した場合には、放電遅れ時間が短くなりその変化は小さくなる、つまり、初期電子の供給量の減少したことが実験的に明らかとなった。さらに、電子の供給過程は、電極の半径と電極間距離を変化させた場合の比較より、電極表面の凹凸の発生による局部的な電界の増加のため、電界電子放出により供給されたものではないと判断した。したがって、窒素活性種の蓄積が原因とする予測が裏付けられたことになる。この成果は、電気学会で発表し、平成22年夏には電気学会の論文誌に掲載される予定である。 ところが、CF_3Iを混合した場合、窒素単独の場合に比べれば、電子の供給量は大幅に減少するものの、放電を繰り返すと、供給される電子数が増えるといった、ほかのガスとは全く違った傾向を示すことが実験的に明らかとなった。測定後に電極表面の組成分析を行ったところ、ヨウ素の析出が観測された。そこで、CF_3Iの分解により発生する生成物の空間での蓄積やヨウ素の電極への付着が原因と考えられた。これらの成果は、高電圧工学国際会議で発表した。 あわせて、自動計測するための制御回路の作成に取り組み、平成22年度の実験ではシステムに組み込むための準備を行った。
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