窒素を主成分とした気体中で絶縁特性を測定すると、窒素は内部エネルギーを長時間保持する性質があるため、放電を繰り返すと後続の放電時の絶縁特性を低下させる危険性が高い。そこで、特性の低下を防ぐために、窒素に別種の気体を混合させる方法が考えられる。その際、混合させるガスの種類と混合の割合を見出す事を本年度の研究目的とした。前年度の研究により、脱励起作用により内部エネルギーを解放させる性質の高い分子の混合と、発生した電子を付着する効果の高いガスの混合がそれぞれ有効であることを明らかにしてきた。しかし、脱励起作用をする分子を混合させた場合、前段の放電終了後1秒以下の領域ではむしろ、混合しない場合よりも多くの電子を発生させてしまうことが本年の研究によって明らかとなった。したがって、密閉容器中に配置する電力機器の絶縁のために窒素を主成分とする雰囲気を利用する場合には、複数のガスを混合する必要があることが明らかとなった。具体的には、一酸化窒素や炭酸ガスと酸素あるいはSF6を混合させる方法が有効と判断された。その際に混入させるガスの混合比は数%程度で良いことが実測により判断された。したがって、SF6を使用したとしても、その使用量を数十分の一に減らすことが可能である。一方、脱励起作用と電子付着作用を併せ持つCF31は、電子の発生を抑制するためには極めて有効であるが、放電によるヨウ素の電極表面への析出、その結果として圧力が高い場合における電子発生に対する抑制効果の低下、が明らかになった。そこで、CF3Iの脱励起と付着の作用を有効に活用するためには解離したヨウ素を吸着する物質を容器内に配置する等の対策が不可欠であることが明らかとなった。したがって、絶縁特性だけに着目すればCF3Iを利用する効果は高いが、実用的な観点から見れば更に別の視点からの検証が必要であることを明らかにした。
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