研究概要 |
本研究は,瞬時空間ベクトルインバータに基づくACサーボシステムにおいて,電流制御系の制御演算を限りなく短縮することで,超高制御帯域の電流制御系を実現し,サーボシステムの高性能化を行うものである。今年度,研究を遂行し,以下の成果を得ている。 1.瞬時空間ベクトルインバータの制御部に加え,d軸,q軸の電流制御系をFPGA(Field Programmable Gate Array)により構築した。これにより,従来のDSP(Digital Signal Processor)を用いた制御系では,電流検出から出力電圧の変更まで11[μs]を要していたものが,6[μs]と約1/2に短縮された。これにより制御遅れ時間の影響が抑えられ,SPM同期モータのサーボシステムにおいて電流制御帯域を12000[rad/s]と非常に高くしても,オーバーシュートや振動のない安定した動作が得られるようになった。 2.電流制御帯域を高くすると,速度急変時などにインバータ電圧飽和が生じやすくなり,ワインドアップ現象によるオーバーシュートや振動が生じる。今回,FPGAにより構築した電流制御器に,アンチワインドアップ機能を加えたことで,16000[rad/s]と非常に高い電流制御帯域であっても,電圧飽和に伴うオーバーシュートや振動がなく,高速かつ安定した電流応答が得られた。 3.昨年度までに,電圧飽和時の出力電圧の位相を変えると,より大きな電圧を出力することができ,速度の過渡応答特性が改善できることを確認している。今年度は,電圧飽和を考慮した電流制御系と瞬時空間ベクトルインバータの制御部をFPGAで構築したSPM同期モータのサーボシステムに,電圧飽和時の位相を変える手法を適用した。これにより,超高制御帯域の電流制御系による電流応答の改善に加え,電圧位相の変更による速度応答の改善が同時に実現でき,定格負荷での200[rpm]から2000[rpm]への速度ステップ応答において,整定時間を183[ms]から155[ms]に短縮することができた。
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