本研究は、長さ300mmのモデル・ケーブル導体を作製することを目標とし、ケーブル導体を構成するためのBSCCO超電導線材を開発することを目的としている。H21年度の研究実施計画は、長さ500mm、幅2mm、厚さ0.2mmのBSCCO超電導線材を開発することである。先ずは、パウダーインチューブ法により短尺テープ(長さ40mm)を作製し、一次焼結(テープ幅1.75mm、厚さ0.50mm)を大気中、830℃~850℃の範囲で行った。この結果より一次焼結を836℃として、二次焼結(テープ幅2.08mm、厚さ0.26mm)を大気中、830℃~860℃の範囲で行った。二次焼結では850℃付近で高い臨界電流値I_Cが得られ、最大値はI_C=4.5A(臨界電流密度J_C=3.2×10^7A/m^2)であった。I_Cに対する超電導粉末充填密度の影響を調べるため、2.46g/cm^3~3.35g/cm^3の充填密度範囲で短尺テープを作製したが、I_Cに与える影響は確認できなかった。次に、長尺テープ(長さ500mm)を作製した。ローラーで圧延する際にテープが曲がってしまうため、ローラー出口にガイドを挿入することによりテープの曲がりを防いだ。大気中において、一次焼結を836℃、二次焼結を850℃で行い、最大I_C=3.8Aが得られた。長尺テープを長さ方向に十分割し(長さ各50mm)、テープの長さ方向に対する電流値の分布を調査した結果、両端部のI_Cが高く(I_C=5.2A)、中央部のI_Cが低いという結果になった。今後、電流値にばらつきが生じる原因を突き止め、次年度目標値であるI_C=10Aを達成する。
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