本研究は、長さ300mmのモデル・ケーブル導体を作製することを目標とし、ケーブル導体を構成するためのBSCCO超電導線材を開発することを目的としている。H23年度の研究実施計画は、長さ500mm、幅2mm、厚さ0.2mmのBSCCO超電導線材を作製し、曲げ直径35mmで臨界電流値(Ic)10A以上を達成することであった。ただし、前年度までの研究で、曲げなしの状態で長さ500mmの超電導線材の最大Ic値が3.4Aであったため(長さ50mmの線材では4.5A)、Ic値を10Aに達成させることを目標に研究を行った。Ic値が目標に達しないのは、加工時において線材に部分的な傷が入って内部の超電導体が染み出すことがひとつの要因であると考えた。そこで、フィラメント作製時の銀パイプの肉厚を0.5mmと0.75mmと変化させ、肉厚が超電導線材の特性に与える影響を調べた。超電導線材の作製は、(a)長さ50mmの線材と(b)長さ500mmの線材の2種類を行った。(a)短尺線材では、肉厚の増加により超電導体の染み出しが防げることは確認できなかった。線材断面の観察からは、肉厚を増加したことで良好な状態でフィラメントを形成できることが分かった。また、肉厚の違いはIc値に影響を与えなかったが、加工時に圧延機などの汚れをきれいに取り去ることにより、最大Ic値6.1Aが得られた。(b)長尺線材では、フィラメント作製時の銀パイプへの超電導粉末の充填密度を2.4g/cm^3~3.6g/cm^3と変化させ、焼結条件を一次焼結836℃×50h、二次焼結850℃×100hと固定して、超電導線材を作製した。長尺の線材でも肉厚の違いはIc値に影響を与えることはなかった。最大Ic値は1.7Aで前年度までの最大値を超えなかった。
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