研究概要 |
本研究は,静電気放電による火災,爆発,誤作動等の障災害を防止するための基礎的・基盤的研究として,静電気放電現象における着火や誤作動の危険性を高める要因を明らかにすることを目的としている。そこで研究2年目となる平成22年度では,以下の項目に重点を置いた実験研究を行った。 帯電物体の移動速度が火花放電時の火花長に及ぼす影響を主に解明するために,昨年度製作した放電発生装置を用いて,接地球電極が固定された帯電球電極に向かって等速度で移動する状況下で火花放電を発生させ,火花長及び電場プローブへの誘導電圧を観測した。 実験では,等速度運転時の速度を接地電極の移動速度として,0.1cm/s,2cm/s,4cm/s,6cm/s,8cm/s,10cm/sの6つの場合について,各10回の火花放電を発生させた。接地電極は放電とほぼ同時に帯電電極への接近を停止する仕組みになっており,放電ごとに静止したときの電極間の間隙を放電発生装置の1軸ステージと連動して移動するノギスによって測定し,静止時における電極間の間隙長に慣性による補正長を差し引いて,火花長を算出した。この実験より,次の結果を得た。 (1)接地球電極の移動速度が速くなると,火花長の平均値はおおよそ短くなる傾向を示した。 (2)接地金属球の移動速度が速くなると,火花放電の発生時における誘導電圧波形の最初のピーク値は大きくなり,波形の立ち上がり時間はおおよそ短くなる傾向を示した。 (3}火花放電の発生時における誘導電圧波形の最初のピークでのスペクトログラムは,接地金属球の移動速度が速いほど,その振幅はおおよそ大きくなる傾向を示した。
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