研究概要 |
本研究は,静電気放電による火災,爆発,誤作動等の障災害を防止するための基礎的・基盤的研究として,静電気放電現象における着火や誤作動の危険性を高める要因を明らかにすることを目的としている。そこで研究3年目となる平成23年度では,以下の項目に重点を置いた実験研究を行った。 静電気放電が発生する代表的な状況として,(a)帯電物体が移動しながら接地体に接近し,ある限界距離に達したところで放電が発生する(帯電した人体(指先)から生じる放電を想定),(b)接地体の近傍にある物体の電圧が徐々に上昇して放電発生電圧に到達し,放電が発生する(粉体輸送時のような静電気が連続して発生する場合に生じる放電を想定),の2つのケースについて,一昨年度に製作した放電発生装置を用いて,放電現象を観測した。(a)を模擬した実験では,一定の電圧を充電したコンデンサを接続した放電電極を接近させて放電発生のしきい値電極間隙長を測定し,(b)を模擬した実験では,電極間隙長を固定した放電電極に接続したコンデンサを徐々に充電して電圧をゆっくりと上昇させて放電発生のしきい値電圧を測定した。また,同時に電磁パルスの測定も行った。この実験より,次の結果を得た。 (1)(b)を模擬した実験の方が,(a)を模擬した実験よりも放電開始電圧のばらつきが大きくなる傾向を示した。 (2)放電開始電圧と電極間隙長の関係から,(b)のケースの方が(a)のケースよりも放電を発生しやすいといえる傾向を示した。 (3>火花放電の発生時における電磁パルスは,放電電流波形の最初のピークでのスペクトログラムとおおよそ同じ傾向を示した。これにより,静電気放電を初期の段階で検出するために,センサが静電気放電の危険性を増大させることなく,静電気放電を検出する手法として有効であることが分かった。
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