研究課題
本研究の目的は、強磁性トンネル接合界面の磁性電子の波動関数の対称性とコヒーレントトンネル状態にある電子の直接観測と解析である。そのために(1)DV-Xa法を用いた磁気コンプトンプロファイルシミュレーターの開発と理論的検討(2)Fe/MgO人工格子などの試料作製と界面の波動関数の対称性の観測(3)コヒーレントトンネル電子の波動関数のΔ1対称性の直接的観測への挑戦。の3つの課題を設定している。(1)に関しは、クラスターモデルを使った界面のモデル化を行い、電子構造の計算を行った。その結果、Fe/MgO界面においては、OはMgとの親和性のためFeと結合せず、Feは真空表面に近い電子状態となって磁気モーメントが増大した。さらに、Fe界面の磁気モーメントの増大に示すように界面のFeの電子状態は変わっているが、波動関数の対称性のみに着目するとFe層内部と界面で変化してなかった。一方、界面でFeが酸化すると界面の波動関数の対称性が変化し、磁気量子数|m|=1の割合が増加し、|m|=0の割合が減少した。(2)に関してFe/MgO多層膜を作製した。X線回折による評価からFe(001)/MgO(001)配向が確認された。界面で酸化している試料ではFeOの存在が確認された。磁化測定から、酸化していない試料では界面のFe磁気モーメントの増大が確認された。Sprin-8-BL08Wで磁気コンプトンプロファイルを測定し、波動関数の対称性を解析した。その結果、界面のFeの波動関数の対称性が(1)で予測された通りであることがわかった。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (22件)
Journal of Synchrotron Radiation 17
ページ: 321-324
ケミカルエンジニアリング 54
ページ: 392-396
