研究概要 |
1)結晶化Si薄膜中の不純物はTFT動作に悪影響を与える。そこで、固相結晶化温度560℃でのYSZ層から結晶化Si薄膜へのZr,Y不純物拡散の振舞いをSIMS法により測定した。ただし、Si薄膜堆積直前にYSZ層を超高真空装内で500℃のプレアニールを行なった。その結果、Si/YSZ界面付近でのZr,Y量は、SIMS測定の測定限界である1×10^<16>/cm^3以下と、それらの拡散がデバイス動作上無視できることが分かった。また、同試料の断面TEM観測を行い、表面凹凸が直接堆積で形成した結晶化Si膜よりも低球できていることも確認した。 2)YSZ層上にSi薄膜のより低温結晶化を行うには、YSZ層の組成比、及びSi薄膜と界面を接する基板表面状態の結晶化に与える影響を明らかにする必要がある。それに対して、以下の検討を行なった。a)Si薄膜が結晶化するYSZ膜のZrとYとの組成比について検討した。その結果、Y組成比Y/(Zr+Y)が約0.15以上必要であることがわかった。これは、Si薄膜堆積直前の希薄フッ酸処理後のYSZ層上には、F+Yから成る単分子層が形成され、それが大気から付着する汚れを防ぎ、清浄なYSZ表面を保つパッシベイション膜として働いているためと考えられた。b)単結晶YSZ基板上、poly-YSZ/ガラス基板上、ガラス基板上に300℃で厚さ60nmのa-Si薄膜を堆積し、560~580℃で固相結晶化を行い、それの違いを検討した。単結晶YSZ基板、poly-YSZ層上のa-Si薄膜は、結晶化遅れ時間τNを伴った後、結晶化率Xcがアニール時間と共に線形的に増加したが、ガラス基板上のXcは、非線形的な増加を示した。またτNは、YSZ基板上、poly-YSZ層上、ガラス基板上の順に長くなった。さらに、500℃のプレアニールを行なった場合は、何れの試料構造もτNが短くなり、プレアニールは結晶化を促す基板表面の清浄化に有効であることが分かった。
|