研究概要 |
ユビキタス技術では,安価で多機能な移動端末が不可欠である。本研究は,そこに用いられるSi系半導体薄膜材料に関するものである。SiおよびSiGe薄膜中の欠陥に対する評価技術を確立し,新しい技術で結晶化した材料に適用することを目指した。 非晶質基板としてガラスを用いた。その上のSiおよびSiGe薄膜結晶の形成方法として従来のエキシマレーザ結晶化(ELC)法および筆者達が開発に関わった連続発振横方向結晶化(CLC)法を用いた。これらを分析評価し,研究実施計画(1)~(3)に関して以下のような結果を得た。 (1)Si系半導体薄膜中欠陥の評価技術を確立:ラマン分光による欠陥評価について研究した。ELC多結晶Si(poly-Si)では粒界部に突起が分布しており,それがラマン散乱強度を著しく増大させていることを立証した。そのためにはプラズマ照射により意図的に表面に凹凸をつけたシリコン結晶を参照試料として用いた。これより,ラマン分光で得られる情報は主に粒界近傍に関するものであることが示された。また,薄膜トランジスタ(TFT)中のpoly-Si膜の評価をガラス基板背面から行ない,デバイス特性との関連を明らかにした。 (2)フロー状Si成長の特質を解明:H21年度にフロー状SiGeの成長に成功した。H22年度はさらに擬似単結晶の成長を実現した。擬似単結晶の確認およびGeの偏析状態の観察をTEM-EDX,EBSD等の電子顕微鏡装置を用いた手法で行なった。 (3)フロー状SiGeを用いた新しい素子構造の立案 H22年度は従来構造のTFTを試作し,130cm2/Vsの移動度を実現した。最初の試作品としては良好な結果と考える。
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