研究概要 |
20-30MHzの高周波数の発信が可能な超音波厚さ計により、縦波・横波が伝わる速度を測定し、圧電性と材料定数(硬さの度合いを示すヤング率や変形の容易さを表すポアソン比)との関係を調べ、高い電気的エネルギーと機械的エネルギーとのエネルギー変換効率をもつ圧電セラミックスを得るための材料研究・開発方向を明らかにした。 測定試料として①ニオブ酸アルカリ系やチタン酸アルカリビスマス系からなる環境に優しい鉛を含まない圧電セラミックス、②これまで圧電セラミック材料として実用化されているチタン酸ジルコン酸鉛系やチタン酸鉛系からなる鉛含有圧電セラミックスを用いた。 円板の径方向の振動の大きさを表す電気機械結合係数(kp)において高kpが得られる化学組成は、低いヤング率及び高いポアソン比から構成されることが明らかとなった。これは電荷の集合体である分域を揃える分極処理により、材料自体が軟らかく(低ヤング率)、更に、分極後に最も軟らかい状態に落ち込むこと(極小ヤング率に達する)に対応していた。以上の結果をもとに、①の非鉛系及び②の鉛系圧電セラミックスでのポアソン比に対する縦波・横波の速度比[(横波速度)/(縦波速度)]の関係を明らかにした。更に、①,②の圧電セラミックスに加え、酸化物無機・金属・高分子材料の(ポアソン比)対(速度比)の関係も併せて調べた。その結果、高圧電性は高ポアソン比及び低音速比で得られることが分かった。これは剛体であるセラミックスが分極処理により容易に変形すること、即ち、横方向(直径方向)の変位が容易に縦方向(円板の厚み)の変位に追随することに対応しており、単に一方向、例えば、厚み方向だけでの低ヤング率だけでは実現できないものと考えられた。
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