研究概要 |
フォトニック結晶ファイバ(PCF)の低損失化が進められている現在,PCFを伝送用ファイバに用いることも検討が進められている.その際には,種々のファイバデバイスもPCFで作製することが望ましい.本研究では,炭酸ガスレーザ照射を用いて高機能なPCFデバイスを作製することを目的としている.平成23年度の研究成果を以下に示す.前年度までに確立した炭酸ガスレーザ照射によるPCFの空孔径制御技術を用いて,偏波保持PCF(PM-PCF)光減衰器の作製を試みた.PM-PCFは空孔を2軸回転対称に配置することで実現され,従来の偏波保持光ファイバに比べて高い複屈折率が容易に得られることが知られている.理論検討では,有限要素法によるモード解析を用いて光減衰器作製に適した(空孔径制御を行う前には低損失であり,空孔径制御を行うことで容易に損失が得られる)ファイバ構造を明らかにするとともに,空孔径制御により得られる減衰量および偏波依存損失(PDL)を求めた.炭酸ガスレーザ照射によりPM-PCF光減衰器の試作を行い,空孔率を小さくすることでより大きな減衰が得られることを実証した.また,本件給にて確立した技術を用いて,炭酸ガスレーザ照射によるホールアシストファイバ(HAF)の空孔径制御に関する研究を行った.HAFは通常の単一モード光ファイバのコア周囲に空孔を配置することで曲げ損失特性を改善した光ファイバである.これまで,空孔の存在によりHAFのコアに屈折率変調グレーティングを形成することは困難であったが,炭酸ガスレーザ照射により空孔を縮小することでコアへの紫外線レーザ照射を可能とし,グレーティング形成を実現する方法を新たに提案した.実験により提案手法の有効性を検討した結果,適切な条件で空孔径制御を行うことで,十分な曲げ損失特性を維持しつつコアへのグレーティングを形成が可能となることを示した.
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