本研究計画においては、光信号のタイミングを柔軟に設定できる光可変遅延線を、光フーリエ変換を利用して構成し、高速光信号に対する時間遅延を低信号歪みで実現する手法の開発と、その性能を評価することを目的としている。今年度は、以下のような成果を得た。 (1)位相変調器と可変分散補償器を用いた光フーリエ変換器の設計 昨年度に引き続き、電気光学効果を利用した位相変調器と可変分散補償器によって構成した光フーリエ変換器の設計と特性評価を行った。昨年度においては、入力波形が理想的な光フーリエ変換の成立条件からずれていることに起因する出力波形の歪みに歪みが観測されていたので、位相変調器の変調特性を計測することで、位相変調指数を明らかにした。ここで得られた位相変調特性に基づいて、フーリエ変換を可能とする可変分散補償器の補償量を明らかにした。 (2)光フーリエ変換器及び光可変遅延線の動作特性評価 (1)に基づいて構成した光フーリエ変換器に光パルスを入力することで、動作確認を行った。出力波形の観測により概ね設計どおりの動作をすることがわかったので、入力信号の波長を可変することで信号の可変遅延を試みた。しかしながら、光コムを用いた光源を用いたため、波長可変により波形が不安定となる問題が生じた。次年度はこのことを踏まえて、より波形が安定なパルス光源を用いた光可変遅延線の評価を行う予定である。
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