・本研究計画においては、光信号のタイミングを柔軟に設定できる光可変遅延線を、光フーリエ変換を利用して構成し、高速光信号に対する時間遅延を低信号歪みで実現する手法の開発と、その性能を評価することを目的としている。今年度は、以下のような成果を得た。 (1)光可変遅延線の動作特性評価 昨年度に引き続き、電気光学効果を利用した位相変調器と分散性媒質によって構成した光フーリエ変換器を用いた光可変遅延線の特性評価を行った。昨年度は入力光信号生成に光コムを用いた光源を用いたことに起因する波形の不安定性が見られたので、より安定性の高い電界吸収変調器により生成したクロック信号を用いて入力光信号を生成した。この入力信号の波長を変化させることで、数種類の長さが数km程度の光ファイバ線路を分散性媒質として用いることで、所望の遅延量を得ることに成功した。さらに光信号の品質評価を符号誤り率特性により行い、信号品質劣化の少ない可変遅延が可能であることを明らかにした。 (2)光可変遅延線の波形歪み補正効果の評価 (1)で評価した光可変遅延線は、光フーリエ変換による波形歪み補正効果を有する。そこで光可変遅延線の光波形歪み補正効果の測定を試みたが、用いた光ファイバ線路による分散性媒質の分散値と入力光信号のパルス幅の値の組み合わせにおいては、信号波形の歪みは微小であり、評価が困難であることが分かった。そこで、上記の光可変遅延線に用いた光ファイバよりも長さが大きい25km長の光ファイバを用いた可変遅延線を構成したところ、波形歪み補正効果が観測されたので、(1)の光可変遅延線も波形歪みの補正効果を有すると結論づけた。
|