研究概要 |
21年度の研究で提案したマテリアル構造ではTM波を入射させたとき,等価的誘電率に大きく影響を及ぼず粒子の共振周波数が,入射角度により変化することが分かった.このため遮断特性が波の入射角度により変わってしまうので,その原因と安定化を検討した.この共振は媒質の構成粒子である金属ストリップのインダクタンスと粒子間のキャパシタンスによって起こる.TM波が入射したとき,各ストリップに入射する電磁波は位相が異なり,ストリップ間に発生する電気力線の数はこの位相差に依存する.このためキャパシタンスの大きさが変化し共振周波数が変わることになる.これを防ぐためにストリップ間に細い金属パターンを追加しキャパシタンスの値を安定化させる構造と,逆にストリップ間のキャパシタンスは下げて基板の厚みを変えることで共振周波数を調節する二種類の案を試し,どちらも効果のあることをシミュレーションにより確認した. 赤外領域での媒質作成については,基板について予備実験を行いBaF2とCaF2を比較した結果,BaF2には劈開性に加え潮解性があることから,今回,CaF2を選択した.薄膜については,基板と同じCaF2をスパッタ法により成膜し,走査型電子顕微鏡による表面観察および透過率の測定を行った.その結果,特に粒界はみられず,90%の透過率を得た.下層金属パターンの形成は電子線描画装置による直接描画により,赤外領域に阻止帯域(中心波長:7μm)をもつ平行導体型粒子構造の作製を行い,所望のパターンを得た.次にCaF2スパッタ後にレジストを塗布し,下層金属パターンをマスクとしたアライメントフリーな作製を試みた,その結果,パターン作製には成功したものの,下層金属パターンの段差のため,レジストパターンは下層金属パターンに比べかなり太くなっており,作製が困難であった.そこで、下層金属膜の厚さを変えて作製を試みたが,改善はみられなかった.今後は,目合わせマークを用いた電子線描画法による重ね合わせ露光を試みる予定である.
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