平成23年度には以下の研究成果を得た。 (1)基板からの突出部が1.4mm×0.45mmのボトムマウント型アイソレータ〔マイクロストリップYジャンクションの下面(接地面)側に突出部を持つタイプ〕において、挿入損失が0.9dB以下、アイソレーション13dB以上という明瞭な非可逆伝送特性を示すアイソレータを設計できた。この特性を実現するには、動作周波数3.9GHz~4.9GHzに応じてバイアス磁場の強度を1260 Oeから1600 Oeの間で最適調整する必要があった。この成果は、本アイソレータは第4世代移動通信システムのみならず、高速無線LANの周波数にも対応できることを示している。 (2)本原理・構造のアイソレータは、いったん基本構造が定まれば、極めて広範な周波数にバイアス磁場の調整で対応できること、挿入損失等の低減等の微調整には、線路の最適化、フェライト部への電磁波の浸透度合いの最適化等が効果的であることが明らかになった。 (3)コプレーナウエーブガイドを基本とし、Yジャンクション伝送線路の上面(中心導体)側に突出部を持つトップマウント型アイソレータ(素子サイズは、2.0mmφ×0.25mmt〔基板からの突出部〕)についても、動作周波数2.09GHで比較的良好な非可逆的伝送特性のものを設計できた。本構造のアイソレータは、マイクロストリップを基本としたものと比べて、基板裏面の加工が不要、突出部のケースの接地が容易、という実用上の利点がある。 (4)昨年度特許出願したバイアス磁場可変機構について、モデル実験で磁場可変の有効性を検証した。この機構は、永久磁石とフェライト部の間に、直径可変な軟磁性円板を配置するもので、軟磁性円板の直径に依存して磁気回路が変化し、バイアス磁場強度を広範囲に変えることができる。モデル実験によってシミュレーションで予想されたとおりの磁場可変が可能であることを実証できた。
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