研究概要 |
本年度の成果の骨子二つは,(A)共鳴トンネルダイオード(RTD)と高電子移動度トランジスタ(HEMT)を用いたモノリシック集積型アイソレータ実現可能性の理論的検証を継続検討する事,(B)実際の集積型アイソレータのデバイス構造を考案し従来のRTDプロセスよりも簡便なマスクレス露光によって微細なメサを形成可能なプロセスを確立する事である。(A)についてはモノリシック集積ジャイレータの構成を基本構成とし,RTDを二つとHEMTを一つ、伝送線路による抵抗を一つ用いて非可逆伝送特性となるように構成している。信号の反射特性を表すS12と通過特性を表すS21を小信号等価回路解析により計算し、それら非対角要素の非対称性を評価した。本研究で導入したアイソレータ実現条件はgm=1/RL…(1)式,1/RL-1/Rrtd=YO…(2)式の二つである。ここで、gmはHEMTの相互コンダクタンス、RLは伝送線路の設計抵抗、RrtdはRTDの微分負性抵抗値,特性アドミタンスである。(1)(2)式は寄生成分を除いた理想的な場合におけるSパラメータを計算することで導かれた基本設計指針を示す条件式であるが,実際のデバイスには寄生抵抗成分が含まれているため、(1)(2)式が妥当な設計指針となり得るかを検証した。実際の素子作製時に含まれるレベルの寄生パラメータ群を妥当な等価回路素子として考慮した場合と理想的な場合とを比較した結果、(1)(2)式が適切なアイソレータ動作設計指針と見なすことが可能であることを明らかにした。一方(B)については,セルフアラインプロセスとしてマスクレス露光によるRTD作製プロセスを確立した。その結果,以下の条件が重要であることを本研究のRTDプロセスにおいて明らかにした。一つめは,メサ上だけ実質的に絶縁膜を薄くするために、現像したい部分のみメサ埋め込み用絶縁膜の膜厚の半分以上の高さにすること,二つめは,現像したい部分の上面に形成するAlやPt等の電極用金属を露光時のメサ上部反射鏡としても兼用できるような露光最適化条件である。
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