光信号処理技術とミリ波技術を融合すれば、これまでにない超高速で大容量のネットワークを構築することができる。これを支える「光・ミリ波融合デバイス」として、超高速動作が期待されるInAsチャネル2次元電子ガストランジスタ(InAlAs/InGaAs/InAs歪HEMT)を取り上げた。InAsはAuger再結合のしきい値エネルギーが小さく、少数キャリアである正孔のAuger再結合時間が極めて短いことが予想され、このHEMTは超高速の光検出器として動作することが期待される。また、InAsは移動度が大きいので、電気的にもInGaAsをチャネルとする従来のHEMTよりも超高速で動作する。この結果、一つのトランジスタで100Gbit以上の超高速動作が可能となる光・電子融合デバイスを実現できる。今年度は基本動作の確認を目的としてゲート長0.7μmのHEMTを試作し、レーザ光照射時の動作特性を実験的・理論的に解析して、デバイス動作を律している物理を解明した。以下に成果をまとめる。 1.HEMTの高周波特性を評価したところ、ゲート長が0.7μmにも拘わらず真性遮断周波数(fT)として90GHzを得た。最先端の加工技術を駆使してゲート長を0.1μmまで短縮すれば、このHEMTのfTは630GHzに及ぶ。 2.光応答特性を評価したところ時定数が24psecの高速応答を示した。従来のデバイスではnsecの応答が限界であったので、応答特性の飛躍的向上といえる。詳しい解析から、応答時間は正孔のチャネル走行時間およびAuger再結合時間の二つの成分からなり、このうちAuger再結合時間の短縮が高速光応答に繋がっていることが分かった。 以上により、InAsをチャネルにもつHEMTを用いた超高速光・電子回路の開発への道が開かれた(特許出願中)。
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