情報セキュリティ技術は、情報化社会を支える重要な技術であり、中でも暗号技術は最も重要な基盤技術の一つである。90年代後半から、暗号アルゴリズムが実装された暗号回路に対する物理的な様々な攻撃法(内部情報の不正な取得を試みること)が提案され、情報セキュリティに対する新たな脅威となってきた。特に、暗号回路の処理時間や消費電力といったいわゆるサイドチャネル情報を解析する"サイドチャネル攻撃"と呼ばれる攻撃法は、強力な攻撃法として注目されている。したがって、暗号回路には数学的な安全性だけでなく、実装面での安全性(耐タンパー性)も求められる。安全な実装を実現するためには、高度な耐タンパー評価・対策技術が不可欠である。 故障利用攻撃手法は、サイドチャネル攻撃の一つであり、一般的には外部からの異常な電力供給や強力なレーザ光を照射することにより、意図的にエラーを発生させて、それを基に鍵などの解読の手掛かりを得る攻撃方法である。故障利用攻撃に関する研究(攻撃の一例を図1に示す)は、90年代後半に始まってから、多くの研究者によって絶えずに続けられている。 そこで、故障利用攻撃に対する耐性を持つ暗号LSI回路設計の要求が高まっている。このような故障利用攻撃の対策手法は、国内外でいくつか見られるが、これらの研究はいずれも、回路動作中にフォールトを自動検出するため、回路面積オーバーヘッドが増大し、かつ、フォールト検出率が良くならないという本質的な問題点がある。 平成23年度は、「スキャンベースサイドチャネル攻撃」、「耐タンパー設計・テスト技術」、および、それらを実現させる「LSI暗号回路設計」の3つのテーマについて研究開発を行い、優れた研究成果を得ることが出来た。
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