1.電界印加時における液晶分子配向に基づく弾性ネルギーと電気的エネルギーの総和の極小値に関係する連続体理論を適用することで、液晶分子配向及び光学位相差分布を求めるシミュレーション手法を構築した。このシミュレーション法により、液晶セル内で光学位相差が一次元すなわち直線状、及び二次元すなわち放物線状に滑らかに変化するような分子配向状態を得るために必要な誘電率分布を求める方法を確立することができた。さらに、新たに開発したインピーダンス回路網モデルを併用することで、誘電率のみならず抵抗成分も取り込んだ、より一般的なインピーダンス分布に基づく液晶分子配向及び光学位相差分布特性を求める手法へ拡張することができた。 2.強誘電体ナノ粒子を分散した媒体を用いて透明導電層(ITO)を付けたガラス基板上に強誘電体ナノ粒子分散ポリマー層を作製し、誘電特性の測定及び評価を行なった。 3.ITOガラス基板上にナノ粒子の密度が階段状に変化している強誘電体ナノ粒子分散ポリマー層を作製し、その表面にラビング処理を行ない、対向基板としてポリイミド配向膜を付けたITOガラス基板及び25μm厚のスペーサを用い、ネマティック液晶を封入した液晶セルを作製した。 4.試作した液晶セルにおける印加電圧による光学位相差特性を測定し、強誘電体ナノ粒子の密度による特性の変化を得ることができた。 5.シミュレーションによる液晶分子配向の解析から、強誘電体ナノ粒子分散層の厚みが数10μm以上必要であることが見込まれるため、ナノインプリント法では対応が難しいことから、強誘電体による微細領域の作製法としてディスペンサー方式及びインクジェット方式を採用することとし、その準備に着手した。 6.液晶分子配向に関るシミュレーション結果及び強誘電体ナノ粒子分散膜の特性評価結果等の平成21年度における研究を総括し、次年度における研究指針を策定した。
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