シリコン半導体デバイスの高集積化に伴い将来は10mm以下の極浅ドーヒン部層の形成が必要である。従来法である数MeV~数十keVのイオンエネルギーを用いたイオン注入法ではシリコン結晶中に多量の原子空孔および格子間原子がなだれ現象的に形成されてしまい、ターゲットであるシリコン半導体の結晶性が著しく劣化する。結晶性の回復と導入したドーパントの活性化のためには熱処理が必要であるが、ドーパントの拡散が生じて極浅ドーピングプロファイルを保つことが困難となる。特にp型ドーパントであるボロンは原子半径が小さいためにシリコン結晶中を拡散しやすく、10mmの極浅ドーパント層の形成が困難である。本研究では、上記問題を解決するために500eV以下の超低エネルギーボロンイオンを用いた超低エネルギーイオン注入技術を開発した。昨年度までの検討から、イオンエネルギーが300eVの注入および注入後の800℃での熱処理による活性化プロセスによりシート抵抗が最小値4kΩが得られた。透過型電子顕微鏡により高分解能断面観察を行ったところシリコン結晶格子が明瞭に観察され、従来法とは異なり、超低エネルギーイオン注入ではダメージ層形成が抑制される事がわかった。エネルギー損失12.3eVの電子を用いてエネルギーフィルターTEM像を観察したところ、表面近傍にコントラストが観察された。このコントラストのラインプロファイルから、層の厚さは表面から約15mmであった。これは表面近傍に密度が異なる層が形成された事を示唆し、超低エネルギーイオン注入によりボロンがシリコン格子中に導入されたと考えられる。SIMSによりシリコン表面からの深さ方向分析を行ったところボロン注入層の厚さはおよそ15nmであり、エネルギーフィルターTEM像で観察された表面コントラストはボロン注入層である事が確認された。
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