研究概要 |
本年度は大容量ルータにおけるパケットスイッチング機能を経済的に実現するため,入力バッファ型ATMスイッチの高効率な制御アルゴリズムの検討と,そこに用いられる大規模空間スイッチ構成法の検討を中心に研究を進めた。本年度の主な研究実績は下記の2点である。 (1)セルのスケジューリングアルゴリズムの提案と性能評価 セルの送出時刻を割り当てることを特徴とするスケジューリング制御の基本方式は,入出力バッファ間でスケジューリング衝突により効率が70%.以下に劣化する。その問題を解決するために筆者らが提案したパイプライン型スケジューリングでは,入力ポートのスキャン順序を変更するためのアイドル時間により効率が90%以下に劣化する問題があった。本研究では入力ポートと出力ポートの両方で同時にスケジューリング動作を行うレシプロカル・スケジューリング方式と,入力ポートのVOQ(仮想出力キュー)に対してスケジューリング処理の優先順位を付与するデッドライン・プライオリティ方式の2つを新たに提案した。シミュレーションの結果,ほぼ100%の効率を達成できることを示した(外部発表済み)。 (2)大規模空間スイッチ構成法および制御法 従来のクロスバースイッチに代わる大規模スイッチとして,新たに縮退型クロスバースイッチの構成原理を提案した。また,その性能を評価するため,新たな性能指標としてスイッチ規模(クロスポイントの削減)と制御の複雑さ(再配置数)の比を新たに導入した。その性能で比較した場合,縮退型クロスバースイッチは最適な性能を有することを理論的に明らかにした(論文投稿中)。また,空間スイッチの代替案としてベネス網に注目し,その高速制御法を提案してきた。その技術が国内特許および外国特許として登録された。また,FPGAを用いて動作実験を行い,高速動作が実現できることを実証した(論文投稿準備中)。
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