研究概要 |
体内植え込み型心臓ペースメーカは,常時患者の心拍を監視し,必要に応じて電気刺激を心臓に与えるため,患者の症状にあわせて動作プログラムを書き換える機能を有している。このプログラムの書き換えは低周波帯での磁気結合方式により行われており,通信距離が短いためプログラマヘッドを患者の皮膚表面に接触させる必要があるだけではなく,通信速度も低く患者の拘束時間も長い。そのため高周波無線方式による通信距離の増大,患者拘束時間の短縮が望まれており,米国や我が国の総務省において,403.5MHz帯を用いた無線方式による通信規格整備が進められている。本研究では,この403.5MHz帯無線規格にて利用可能なペースメーカ装荷用アンテナの実現をひとつの目標とし,コンピュータシミュレーションと試作アンテナの実測により検討を行った。同様の人体植え込み型アンテナに関する検討では,人体を均一媒質のモデルに模擬した検討例が多い。しかしながらペースメーカは胸部鎖骨下の皮下脂肪層直下に植え込まれるため,ペースメーカ周囲の筋肉,脂肪,皮膚等の各生体組織がアンテナ特性に影響を与えることが予想されるので,日本人標準体型を用いたリアル数値モデルによる検討を行った。その結果,提案したアンテナが403.5MHz帯無線規格において利用可能であることを確認した。男女で脂肪の付き方の違いにより,伝搬特性が若干異なることを確認した。 また,患者の腕などに埋め込み医療情報を伝送するシステムのため,より多くの情報量を伝送できる2.45GHz帯に対しても検討を行った。多層構造ファントムを用いて,人体に埋め込み可能な構造のアンテナを設計・試作し,計算通りの入力インピーダンス,指向性,利得が実現できることを確認した。
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