研究概要 |
人体通信に用いられるアンテナには小形・軽量性が求められる一方で,安全性の観点からその設計には高精度なシミュレーションによる細心の注意が求められる.また,人体の影響のためにアンテナ特性が激しく変化するために,人体近傍アンテナの設計にはアンテナと人体とを一体にして設計しなければならない. 本研究は人体通信用アンテナ設計のための高精度電磁界シミュレーション法について研究するものである.電磁界は一般に導体や誘電体の表面近傍で激しく振動するため,電磁界を精度よく数値計算するためには,表面近傍の取り扱いが非常に重要である.一方,人体の数値モデルは直方体メッシュ内の電気定数として与えられているため,FDTD法が適している.本研究では,表面付近電磁界の空間分布が準静電磁界のそれとよく似ていることに注目して,FDTD法の前処理として,簡単なモデルに対して解析的あるいはモーメント法によって計算された電磁界の空間分布を,FDTD法の計算グリッド上でスケール変換して組み込むことにより高精度化を図った.その結果,導体付近の1~2グリッドだけを修正すれば精度が格段に向上することが分かった.誘電体に対しても同様の方法が有効であると考えられるが,誘電体内部の電磁界や境界条件等が複雑になるため,本年度内では確証が得られなかった.しかし,腕を模擬した円柱誘電体に関しては厳密界との比較によりその見通しを得ている.また,電磁波暴露に関する検討を目的に大地上の散乱問題に対する検討や,FDTD法における吸収境界についても新たな検討を加えた.
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