研究概要 |
携帯情報端末や人体通信などに用いられるアンテナには小形・軽量化が求められる.アンテナの設計には市販の電磁界シミュレータが用いられることが多くなってきたが,必ずしも満足できる計算精度が得られないために時間の浪費になることも度々ある.本研究は,人体通信発展の可能性を探るために,アンテナ周辺の電子回路基板や人体等の電磁環境的要素も含めて,小形アンテナの特性を超高精度に計算できる電磁界シミュレータを開発することを目的として研究を進めてきた.本年度は,昨年までに行ってきた研究成果の一部取りまとめと,(独)情報通信研究機構が開発した数値電磁ファントムを利用した人体通信用アンテナの安全性を確認するための電磁波暴露実験のための基礎的検討を行った.人体内の電磁界計算においてはFDTD法が広く用いられているため,本研究でもFDTD法を基本としているが,平板状アンテナの解析では精度を向上させようとすると,莫大な計算機資源を必要とする.一方,人体通信用アンテナには平板状のアンテナが用いられることが多い.そこで,誘電体基板上にプリントされたアンテナの解析を計算機資源を極力抑えつつ,高精度に解析する手法を開発し,論文誌に投稿した.また,同じ手法ではその有効性を証明したことにはならないと考え,モーメント法における高精度な計算手法も開発した.人体通信を人体側からみれば,電磁波に曝露される人体の安全性という点も考慮しなけらばならない.この安全性は数値計算だけでは不十分で実験的な検証もまた必要となる.実際に人が試験者になることは倫理上の問題や個人差があるため,標準的な人体ファントムを用いて検証実験を行うのがよい.そこて,本研究では,遠方界曝露用液体ファントムの開発を行ない,専門誌に発表した(現在,印刷中である).また,これら研究の基本的な部分は国際学会を含めた学会発表を行った.
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