研究概要 |
当年度の計画に沿って,有限状態通信路の通信路容量問題を,入力系列を隠れマルコフ情報源で近似することによる効果について研究を行い,ドイツで開催されたDagstuhl Seminarで発表した。さらに,マルチユーザー情報理論の基本問題である干渉通信路容量問題についての最近の展開を情報とダイナミクスIII研究集会(九州大学)における招待講演で展開し,また残された問題に対する展望を電子情報通信学会IT研究会の特別講演として与えた。 また,電子透かしと誤り訂正符号化に関する問題に関して、QIM(Quantization Index Modulation)方式、dither modulationなどの埋め込み手法を用いた音楽電子透かしに対してなされるMP3圧縮符号化攻撃の特性を探求した。MP3圧縮による攻撃を雑音通信路とみなした場合の通信路特性の解析とそれに対する方式としてLDPC符号(低密度パリティ検査符号)を利用する方式の検討を行った。音楽電子透かしとしてLDPC符号を用いた実用的な方式の提案を行うとともに、情報理論的な通信路解析、LDPC符号の復号法についての提案を行っている。 さらに,新しい誤り訂正符号の研究として今後の発展が期待される格子符号をとりあげ、低密度の格子に基づくLDPC符号についてNoise Thresholdsを用いた理論的解析、近似的なガウス分布を用いる復号方法の提案等を行い、実用性を高める研究を行った。加えて、古典的な同期誤りに対する符号化手法による誤り訂正と自己同期を同時に実現する新しいクラスの問題を提起し、その実用的な符号化手法および、理論的な枠組みの定式化を行った。
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