研究概要 |
本研究の目的は,ビット誤り生起確率に関して最適な,非線型力学系に基づくスペクトル拡散符号の実現とその応用である.非同期SSMA(spread spectrum multiple access)通信システムの性能評価に関するYaoの問題に対して,確率解析の立場から,完全な解答を与えた.その結果に基づき,ビット誤り生起確率に関して最適な位相シフトフリーM(≧3)-相スペクトル拡散符号の設計に成功した.以上の理論的結果を実現するために,非線形フィードバックシフトレジスタ(NLFSR : nonlinear feedback shift register)最大周期列を与える超離散力学系を定義し,その個数を与えるアルゴリズムを示した(Trans.IEICE, 2005. 10).しかしながら,その生成法は未解決の難問である. 位相シフトフリーM-相スペクトル拡散符号を実現する区分的線形マルコフ変換を含む,区分的単調増加マルコフ変換を考え,それらが離散化された変換に基づく最大周期列を全て生成するような,有界単調真理値表アルゴリズムを与えた.現在,最大周期列の総数を計算する既知のアルゴリズムの計算量は指数関数的オーダである.最大周期列の総数を計算することなく,全ての最大周期列を生成するという意味において,提案したアルゴリズムは効率的である,典型例として,アルゴリズムを全てのde Bruijn系列の生成に応用した(Proc.N0LTA2009, 2009. 10). 本研究代表者は,本研究に関連して,乱数生成に関する研究も行っている.最近,系列全体の空間を考える記号力学系の手法を用いて,HanとHoshiによって提案された区間アルゴリズム(IEEE Trans.IT, 1997)はランダムなブロック(有限列)を生成するアルゴリズムであり,確率過程(無限列)を生成するものではないことを明らかにすると共に,エルゴート理論における有限的符号化を応用して,確率過程を実現する新しいアルゴリズム,有限的区間アルゴリズムを提案した(Trans.IEICE, 2008).記号力学系の手法を用いて,乱数が均等分布の場合にHanとHoshiの上下界よりも良い評価式を陽に与えた(Proc.ISIT 2009, 2009. 7).
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