本研究では、農産物の育成管理を自動化するための低消費電力な無線センサネットワークプロトコルを開発することを目指している。最終年度は、さらなる省電力化を目指し、予測センシングのシステム開発を行った。これは、各センサノートに簡易な予測アルゴリズムを搭載し観測データの予測を行うことで冗長なデータ送信の削減を図るものである。予測アルゴリズムとして、ハードウェア的制限の厳しいセンサノードに実装が可能な、移動平均、予測メモリ、最小二乗法、カルマンフィルタ、LMS適応フィルタを用いた。そして、パケット損失が予測センシングに与える影響について評価した。シンクノードが予測失敗を知る唯一の方法は、センサノードから送信される訂正情報(パケット)の受信のみであるため、通信時にパケットの損失が発生すると、シンクノードは予測に成功したと判断し誤った結果をユーザに与え、最悪の場合にはセンシングシステムとして機能しなくなる。評価の結果、送信回数削減率については、カルマンフィルタ、予測メモリを予測アルゴリズムとして用いた場合で高くなり、測定環境によっては最大で95%を越える結果を得た。一方、LMS適応フィルタを予測アルゴリズムに用いた際の送信回数削減率は、LMS適応フィルタのトレーニング期間の影響を受けることで低くなった。また、室温を許容誤差2℃で予測センシングする場合、カルマンフィルタ等の予測機構を用いることで、パケット損失が90%発生する環境下でも予測誤差が許容誤差以下となった。しかし、測定値の変化が激しいハウス内温度や許容誤差が小さい場合では、パケット損失の影響により予測誤差が許容誤差を上回った。これら環境ではパケット損失の低下を防ぐための何らかの対策が必要である。今後は、各要素技術を統合したシステム開発をし、農産物生産管理技術として評価することが挙げられる。
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