筆者らがこれまで行ってきたAC 100V電力線線路のモデル化の発展研究として、各種線路が混在して構成されるネットワークにおけるPLC技術の適用性を検討した。特に、AC/DC変換に伴う損失を軽減するために近年注目されているDC(直流)給電に使われるであろうケーブルの伝送性能(分布定数)を評価した。その結果、従来のビニル絶縁ではなく、ポリエチレンを絶縁体とするケーブルにすると広帯域かつ低損失通信が可能であることを示した。この結論は電力ケーブルに限らず通信ケーブルでも同様であるはずであり、次年度さらに検討を行う予定である。 また、各種の電線路を使用する場合に問題になる点が、通信信号の漏えいによるEMC対策である。近年盛んに研究されているコグニティブ無線の考え方をPLCに適用するためはどうすればよいかを検討した。その結果、漏えい電界強度の簡易かつ高感度な測定方法として、PPS (Periodic Packet Sound)と呼ぶ新たな方法を提案した。従来のスペクトルアナライザで行う方法と同等の感度でかつ1/20のコストで実現できる特長を有する。 通信信号あるいは線路上の雑音信号のみで給電する自己給電式PLCを実現するうえで、それらの電力を得る方法が課題である。本年度は、ラインのインピーダンス整合器の可能性を検討した。電力線を始め各種非通信線で通信を行うためには、線路の整合を如何に取って信号の伝送歪を軽減するかが重要であると考え、その効果の程度を上記DC給電線で検討した。その結果、適切な場所に設置すれば大きな整合効果が得られることがシミュレーション実験で確認できた。次年度はこの整合器を使った充電方式を検討する予定である。
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