研究課題
本研究の目的は無線通信の回線設計で必要となる電波の伝搬特性を解明する研究手法としてスケールモデルを用いる方法を確立することである。移動通信環境を対象にしてスケールモデルでの伝搬特性の再現性を検証している。平成22年度の成果は次のとおりである。(1)伝搬損失の再現性:これまでに1/100スケールの平均的な都市環境を作製して伝搬損失を測定してきた。これにより平均的な都市環境では従来から把握されている伝搬損失特性に近い結果が得られた。そこで、平成22年度は実在する都市環境のスケールモデルを作製して、実環境での測定結果と比較した。北九州市の小倉地区の都市を1/350スケールで実験室内に作製して10.5GHzで伝搬損失を測定した。これと実環境で測定した30MHzの伝搬損失とを比較した。その結果、スケールモデルでの伝搬損失が実環境のそれより10dB低い結果となった。この原因はまだ明らかでなく、平成23年度は引き続き検討を行う。(2)伝搬遅延の再現性:ネットワークアナライザを用いて9~10GHzの周波数で遅延プロファイルを測定する送受信系を作製した。また、この周波数帯の電波を発射できるように10m四方の1/100スケールモデルを覆うシールドテントを作製した。テントの高さは4mでテントの形状は回転楕円体を半分にした形であり、これを市販品の電磁波シールドシートで覆った。シールドテント内で遅延プロファイル測定を行い、実環境の100MHzに相当する遅延プロファイルが得られた。実環境ではこれまでに数100MHz~10GHz程度までの遅延プロファイルしか測定されていないので直接的な比較ができなかったが、ビルの反射損失を考慮すると実環境と同程度の遅延プロファイルが得られたと考えられる。平成23年度は2/100や3/100のスケールモデルを用いてさらに妥当性の検証を行う。
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電子情報通信学会論文誌B
巻: Vol.J93-B, No.9 ページ: 1140-1149
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