研究概要 |
21GHz帯衛星放送システムの実現に不可欠な、(1)高速大容量化技術、(2)降雨減衰による品質劣化対策技術のそれぞれについてこれまでに整備した実験装置による降雨減衰測定及びシミュレーション検討を実施した。 (1)高速大容量化技術:シミュレーションソフトウエアMatlab及びSimulinkを用い、大容量化を目指した多値変調方式16QAM、16APSK、32QAM、32APSKの回線品質シミュレーションを直交偏波共用回線を前提として実施した。この結果、APSK変調方式については、コンスタレーション(振幅、位相)の最適化を確かめることができた。この回線の品質劣化要因として降雨減衰及び交差偏波識別度(XPD)劣化を想定した。シミュレーションにより、いずれの多値変調方式においても、回線品質の劣化は降雨減衰が主たる原因でXPD劣化が回線品質劣化に及ぼす影響は小さいことがわかった。このことは、降雨減衰対策を実施すれば、直交偏波共用により伝送容量を2倍にできることを示している。 (2)品質劣化対策技術:これまで整備した高速インターネット衛星(WINDS)の18GHz信号受信システム、36GHz放射計、10GHz放射計により、簡易型2周波天空雑音測定システムで任意の周波数・方向の降雨減衰を推定できる降雨減衰推測システムを完成させた。また、レーダ方式の気象観測装置により1秒毎に変化する降雨強度を計測できるようになり、21GHz帯衛星放送システムの回線設計に必要な、降雨減衰累積分布に及ぼす降雨強度や降雨減衰時系列の計測間隔の影響を定量的に評価した。これらの結果、衛星放送回線の運用稼働率を99.9%以下とする場合には、測定間隔を1分としても、回線設計には支障がないことが明らかとなった。 上記(1),(2)の結果を学会発表した。また、H24年度には学会発表と誌上論文化を進める。
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