研究概要 |
無線端末の小型化に伴い,各ユーザが,通信プロトコルで設定されているパラメータを合法的に改変することが可能な通信環境が広まりつつある.この場合,ユーザは,自己の通信性能のみを向上させるようにパラメータを改変することが予想される.物理層またはネットワーク層のパラメータを改変することは効果的ではあるが,他ユーザによって改変を検知される可能性が高い.本研究では,他ユーザによる検知が困難と考えられるMAC層のパラメータ改変に着目し,ゲーム理論の枠組みの中で,非協力的な利己的ユーザが取るべき戦略を明らかに,その戦略が他ユーザに与える影響および他ユーザが取るべき防御戦略を明らかにすることを目的とする.平成21年度では,利己的ユーザが通信プロトコルのMAC層パラメータの改変という意味において取るべき戦略を,不完備情報ゲームの枠組みの中で明らかにすることに重点を置いて研究を実施した.利己的ユーザを含む通信システムの不完備情報ゲームとしてのモデル化を行い,次の項目を明らかにした.N人ユーザで動作しているスロット付アロハ方式に,新たなユーザが参入する場合において,N人ユーザの個々が利己的に動作しているか否かが確定的に推定できない状況では,参入するユーザは自己のスループットを大きく獲得するという意味において利己的に動作することが必ずしも得策ではないパラメータ領域(MAC層におけるバックオフ係数が大きい場合)があることを明らかにした.
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