平成21年度の研究では、静止画像の高精度補間に適した2次元全域通過・可変非整数遅延(VFD)フィルタのminimax設計法(可変周波数応答の最大絶対値誤差の最小化)を開発した。全域通過2次元VFDフィルタによる可変2次元遅延素子の最適近似問題は1次元の場合と違って極端に難しくなる。しかし、近似しようとする理想の2次元遅延素子は分離可能であるため、2次元分離形伝達関数を用いることが妥当である。高精度の1次元全域通過VFDフィルタを設計できれな、その縦続で2次元全域通過VFDフィルタを構成できる。平成21年度の研究では、まず1次元全域通過VFDフィルタのminimax設計法(可変周波数応答の最大絶対値誤差の最小化)を提案し、数値例を用いてその有効性を実証した。この結果をまとめた論文はIEEE Trans.CAS-I : Regular Paperに採録され、近いうちに掲載される予定である。 1次元全域通過VFDフィルタは周波数特性が可変な再帰形ディジタルフィルタであり、そのminimax設計は非線形最適化問題となる。本設計手法の基本的な考え方としては、その可変周波数応答をフィルタの係数の1次関数(線形関数)として線形化し、線形計画(linear programming : LP)問題として解く。しかし、この結果はあるまでも線形化した近似結果であり、大域的な最適解ではない。この結果を更に改善するため、前回の線形化によって得られた解(フィルタの最適係数)を次回の繰り返しの伝達関数の分母多項式の既知係数として使い、繰り返しこの線形計画問題を解いて行く。繰り返し線形化したLP問題を解くことで最終解は最適解に収束する。様々な設計例を用いてこの繰り返しLP設計法の有効性を確認でき、平坦な周波数応答誤差を得ることができた。
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