研究概要 |
この研究では,砂漠,山林,田畑,海面等に代表されるランダム粗面に沿う電波伝搬特性の数値解析法の開発と伝搬特性の数値シミュレーションを行った.粗面の統計量としては,地表高の標準偏差と地表面上距離に対する相関長をパラメータとして用いている.粗面生成に関しては,申請者らが独自に開発した畳み込み法を用いて実現している.このようなランダム粗面に沿う伝搬問題の解析では,電磁界計算の光学的近似解法に着目して,申請者らが独自に開発した離散化レイ・トレース法を用いた数値シミュレーションを行っている.特に今回の研究では,センサーネットワークの普及と関連して,送信電力と受信機の感度が指定されたとき,伝搬距離がいくらになるかを定量的に算出する計算法を提案した.これらの研究結果は国内研究会や国際会議で公表し,また電子情報通信学会英論文誌に掲載された. 以上の研究では,ランダム粗面の統計量が伝搬領域内で一様と仮定した議論を行っている.しかし現実には,センサー機器が設置される空間は極めて複雑な自然環境に置かれることが多く,例えば田畑と湖面が混成する境界領域や砂漠と灌木林との境界などが考えられる.従って,場所ごとに粗面の統計量が変化する場合を取り扱う必要がある.そこで申請者らは,このようなランダム粗面を不均質ランダム粗面として見做すことによって,伝搬特性の数値シミュレーションを行うこととした.そのために,畳み込み法に基づいて不均質なランダムを効率的に生成する手法を提案し,国内研究会や国際会議で公表した.
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